IPO,PO関係
サンリオ(8136):自己株TOBとユーロ円CBの同時執行
ユーロ円CBの案件概要
- 発行額:300億円
- 年限:5年
- 払込金額:額面の104%、募集価格:額面の106.5% (差額分の2.5%は引受手数料)、償還価格:額面の100%
- 転換価額:7,710円(11/28終値の6,425円から20%の転換プレミアムを付与した水準)
- 潜在株式数:389万株(自己株除き発行済の4.82%、出来高の6日分)
- 3年目以降に130%ソフトコール条項が付与されている(転換促進効果)
- 3年目以降130%ソフトコール条項
- 資金使途:120億円は自己株TOBの資金、残額はグローバルライセンスビジネス関連に充当
- 主幹事:大和
- 潜在株のうち半分程度は取得する自己株と相殺される。よって、実質的な潜在株比率は2.5%程度となる見込み。株価へのインパクトは限定されそうだ
期中は発行差益が発生するCB
- 今回のCBは、額面の104%で払い込まれて5年後に100%で償還される。転換されなければ、実質マイナスコストでの調達が実現できる利点がある
- 太陽誘電のユーロ円CBと同様の仕組み。詳細は、太陽誘電の記事を参照
- 通常のCBであれば、払込金額を100%に設定することで、より高い転換プレミアムを実現できたはずだ(本件の場合、40%近い転換プレミアムも実現できた可能性がある)
- 敢えて転換プレミアムを低く設定することで、最終的には転換させてしまいたい意向が発行会社側にあると思料
自己株TOBの概要
- 218.9万株
- 199万株については、創業家の資産管理会社が応募する旨を表明(清川商事が2万株、光南商事が197万株)
- 他の株主からも要望があれば買い付ける想定で、199万株✖️1.1倍=218.9万株の水準に買付予定株式数を設定
- 買付価格:11/28又は11/30のいずれか低い終値から10%ディスカウントした価格
- 公開買付期間:12/1-12/28
- 決済開始日:2024/1/25
なぜToSTNeT-3ではなく自己株TOBなのか?
- 一般的に、大株主から自己株を取得する場合は、ToSTNeT3を活用することが多いが、今回は自己株TOBとしている
- 発行会社にとっては、時価から10%ディスカウントした水準で取得できるメリットがある(ToSTNeT3はディスカウントなし)
- 今回応募する創業家の資産管理会社にも税務上のメリットがありそうだ。自己株TOBは、税務上資本の払い戻し扱いとなるため、5%以上の大株主の場合、みなし配当課税が適用される(益金の50%は不参入となる)。自己株TOBの税務メリットの詳細については、レーサムの自己株TOBを参照
- また、今回ユーロ円CBを同時に発行する。従って、ToSTNeT3で自己株を取得する場合、大株主に加えて、CBヘッジファンドもToSTNeT3に応募(売却注文)することになる
- 仮にCBの潜在株の3割のヘッジニーズがあるとすると、CB投資家から116万株程度の売り注文が発生する可能性がある
- 創業家の199万株と合わせて315万株の売りニーズが発生することになる。218.9万株に対して大幅に超過するため、比例按分となり、応募株の3割程度は返却されることになる
- つまり創業家にとっては、希望していた株数を売却できなくなるリスクが大きくなるというデメリットがある
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