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ispace(9348):海外募集により追加資金調達を実施

株式会社DMM.com証券

3/25に募集株式数を減額のうえ、条件決定

  • 募集株式数:10,250,000株
  • 募集価格:871円(ディスカウント率:9.9%)
  • 払込価額:815.39円(引受手数料率:5.75%)
  • 公表日から条件決定日まで株価は4.8%下落(TOPIXは4.9%上昇)
  • 海外投資家はバリュエーション重視のため、残念ながら現状の株価水準では需要が十分に集まらず。オファリングサイズは89億円に留まった

このタイミングで海外募集を選択した背景の考察

先行投資で赤字を計上するため、資本増強はマストな状況だった(遅くとも来期には資本増強が必要な状況)
  • 当社は、昨年4月にグローバルIPOを実施(公開価格:254円)
  • IPO時に調達した64億円については、ミッション2の打上げ費用に充当しているが、今回の公募資金はミッション3に関連するものだ
  • ミッション2の打上げは最速で2024年冬を予定している。ミッション3は、2026年の打上げ予定。夢のあるプロジェクトだが、相応の先行投資負担が発生する(=多額のリスクマネーを調達する必要のあるビジネス)
  • 当社の2023年12月末時点の自己資本比率は19%(純資産は36億円)。四季報予想ベースの来期の当期純利益は30億円の赤字予想だ。つまり、過小資本にならないように来期の早い段階で増資は必須だったといえる。今回の増資が成功すれば150億円程度の資本増強が実現でき、当面の財務リスクは解消できそうだ
    • なお、現金に関しては、2023年12月末時点で95億円保有している
    • ただし、今回増資することによって、2025年7月満期の借入金50億円のうち30-40億円程度を繰上返済する必要がある(IPO後に増資した場合、増資額の20-25%を期限前弁済するコベナンツが付与されている)
    • したがって、現状の実質的な手元流動性は50億円程度と試算される
    • 因みに、ローンの出し手はSMBCだ。主幹事のSMBC日興と合わせてSMFGは当社にフルコミットしているようだ
  • 当社の株価は、株式市場環境の好転もあり、回復傾向にあった。上述の通り、来年度中の増資はマストなため、「取れるうちにとっておく」ということで、このタイミングになったと考えられる
宇宙ベンチャーに精通する投資家は米国に存在(多数のスタートアップが米国に上場している)
  • 赤字が先行する宇宙ベンチャーのバリュエーション評価は難解だ。カバーしているアナリストもいない状況
  • つまり、当社の戦略や株価を評価できる投資家は、一部の機関投資家に限られそうだ
  • 類似の宇宙ベンチャーは以下の通り。米国上場銘柄が複数存在していることから、北米投資家が当社の事業を最も理解してくれそうだ。したがって、今回の募集のメインターゲットは、これらの類似企業に精通した機関投資家となる
    • Intuitive Machines(LUNR:SPACを活用してIPO)、Firefly Aerospace(スタートアップ/三井物産が出資)、Astrobotic Technology(スタートアップ)、Xplore(スタートアップ)、Momentus(MNTS:SPACを活用してIPO)、Rocket Lab USA(RKLB:SPACを活用してIPO)
  • 海外募集の場合、オーバーナイトでプライシングする手法もある
  • 一方、本件の条件決定日は3/25(月)を予定しており、1週間以上のマーケティング期間を確保している。しっかりとロードショーIRを実施して、海外機関投資家に(投資してもらうための)トップセールスをするためだ
200億円規模の需要を集めるのは大変?
  • 当社は、IPO後に決算期末を迎えていないため、足元の株主構成はまだ開示されていない。ただ、大株主の状況や、海外機関投資家で5%超を保有する投資家も存在しないことから、海外機関投資家が大株主に存在しているとは想定しにくい
  • 昨年4月のグローバルIPOにて海外投資家は254円でIPOに参加しているが、足元の株価は1,000円を超えている。現状の株価水準で、機関投資家の需要を十分に喚起できるのか、相応のハードルがあるようにみえる
  • 今回の増資は当初1,653万株とし、需要が超過した場合には追加で405万株を発行される予定だ(OA:オーバーアロットメント)。全株発行する場合の希薄化率は20%に及ぶ(最近の公募増資のなかでも希薄化率の大きい案件に該当する)
  • OA含めて全株発行できるのか、募集価格がいくらになるのか(ディスカウント率は何%になるのか)に注目が集まりそうだ
  • 規模が異なるため参考にはならないが、昨年11月にドローン銘柄のACSL(6232)が海外募集を実施したが、需要が全く集まらなかったため募集株式数を減額している(オアシスが唯一参加)
  • 今回の海外募集が成功するかどうかは、今後の当社の資本調達手法にも影響してきそうだ。万が一需要が不調だった場合、今後の増資はバイオベンチャーのようにMSワラントを活用、または特定のスポンサーに頼らざるを得なくなる可能性もある。そうならないよう今回の海外POの成功を祈りたい

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