オファリング概要
- マーケティング期間を伴う海外売出し
- 売出規模は1,262万株(発行済対比37%、出来高の2-3日分)
- 売出価格14,668円(ディスカウント4%)、引受価額14,247.80円(引受手数料2.75%)
- 売出総額1,851億円
- 本件公表から条件決定日まで株価は30.4%下落
- 海外売出しの規模としては大きい(先行事例における大型海外オファリングの上限目安は3,000億円)
- 条件決定日:7月11日(火)、受渡日:7月13日(木)
- 売出人は上位3株主(日本政策投資銀行、富士通、パナソニック)。保有株37%全量を売却する予定
なぜオーバーナイトでプライシングしないのか?
本件はM&A総研の海外売出しと異なり、マーケティング期間を経てプライシングする予定である。理由は以下と推察される
- 大株主が全量売却するインパクトは、定量・定性面で大きく、オーバーナイト・プライシングは無理がある
- 株価に織り込ませ、投資家にも検討期間を与えた上でプライシングする必要があった
- 優良なグローバルテック投資家に対して、丁寧にマーケティングしたい発行会社側の意向がある
- 当社は2022年9-10月にIPOを実施。その際にはグローバル・オファリングの形態で国内外の幅広い投資家にアプローチした
- 今回は、海外機関投資家をターゲットとした訳だが、会社としては優良な海外機関投資家を株主として取り込みたい意向があると考えられる
- 一般的に時価総額が5,000億円を超える半導体関連企業は、海外機関投資家を株主層に取り入れることを重視する
- グローバルテック投資家が株主になることで、継続的なIRで色々と情報交換できるメリットがあるためだ
今後の注目点
- 大株主Capital Research and Managementの動向(大量保有報告書ベースで約6%を保有)
- 大量保有報告の報告義務発生日は2023年1月
- 昨年の株価推移に鑑みると、平均取得価格は7,000円以下の水準と推察される
- 現状の(急騰した)株価水準で売出しに参加するかどうか
- 保有割合に1%の変動があった場合は大量保有報告書の変更報告書にて確認が可能
- 信用個人の動向
- 当社は貸借銘柄ではないため、一方向に株価が動きやすい傾向があった
- ボラティリティが高いこともあり、短期筋の個人投資家を中心に5月以降に人気化
- 足元の信用買残高は214万株(約470億円相当)
- 投げ売りがあった場合、短期的には株価に大きな影響を与える可能性あり
- 7月5日付PTSは、20時現在で17,000円を割り込んでおり、大幅安となっている
- 条件決定時のディスカウント率
- 通常売出しのディスカウント率は2-5%程度で決まる
- 本件は株価のボラティリティが高く、明日以降の株価も大きく変動する見込み
- 優良な海外機関投資家は、バリュエーションで売出し参加有無を判断するが、果たして現状の高騰した株価水準で売出しに参加するのかどうか注目
- 通常よりワイドなディスカウント率で条件決定されるかどうか
- その場合、当該売出価格が優良な海外機関投資家が支持する価格と想定できる
その他特記事項
- 昨年のIPO時はSMBC日興と野村の共同主幹事であったが、今回は野村證券が単独主幹事。SMBCはシ団にも入っていない
- これだけの大型オファリングに参入できなかったのには色々と理由がありそうだが、全て憶測になるのでここでは言及を控えたい
- いつ頃、売出しの準備を開始したのか?
- IPO直後から、大株主の保有株売却手法について投資銀行間で熾烈な提案競争があったのは間違いないが、一般的に海外売出しを実施する場合、2ヶ月程度の期間を要する
- 英文目論見書の作成、ロードショープレゼンテーション資料の作成、引受審査対応があるため
- 本件に適用すると、ゴールデン・ウィーク前後から実務面の準備を開始したと推察される
- 仮にGWあたりにキックオフしたとすると当時の株価は11,000円程度であった
- 準備を進める過程でみるみる株価が上昇したことになる(関係者は戸惑ったかもしれない)
- IPO直後から、大株主の保有株売却手法について投資銀行間で熾烈な提案競争があったのは間違いないが、一般的に海外売出しを実施する場合、2ヶ月程度の期間を要する
- 大株主の簿価は?
- 当社は、資本金302億円・資本準備金は302億円、計604億円の払込資本で設立された
- 日本政策投資銀行は設立時に40%を出資している(約240億円)、富士通・パナソニックは其々20%出資
- 3社で604億円を出資してスタートした当社だが、現在の時価総額は7,600億円
- 経産省が産活法でサポートした案件だが、株主からするとテンバガーを実現できた超成功案件?
- 以下ソシオネクストの出資形態に関するご参考(経産省のHPより)