案件概要:海外売出しの規模としては平均的
- 売出株数は163万株、発行済対比8.5%、出来高の3日分相当、売出総額は165億円
- 一般的にオーバーナイトで条件決定する海外売出の規模は、出来高対比で5〜20日分
- 従って、流動性の観点では十分消化可能な規模と言える
- 売出価格は、ディスカウント9%で早々に決定
- 通常オーバーナイトで条件決定する際のディスカウント率は3-10%が相場であり、その範囲内
ターゲット投資家は海外機関投資家であるが、ヘッジファンド中心と想定される
- ターゲットは海外機関投資家であるものの、大手機関投資家が新規にエントリーする場合、公表して3時間で投資判断を下すのは事実上不可能である
- 当社は2022年に上場、創業者が発行済株式の72%保有。浮動株は27%、そのうち約8%が外国人株主という株主構成
- 時価総額2,000億円程度だが、浮動株時価総額は600億円。海外投資家保有分は200億円に満たない。カバーするアナリストも極めて少ない(=機関投資家の認知度もまだ低い)状況
- 従って、海外機関投資家に対する知名度はまだ道半ばと推察される
- このようなケースで海外売出しする場合、大手海外機関投資家に対して事前にウォールクロス(守秘義務契約を締結してインサイダー情報を共有)してニーズを確認するケースもある
- 本件において、ウォールクロスしたのかは不明だが、現実的には、大手機関投資家がカバーしている銘柄ではないため、ヘッジファンド中心に販売された可能性が高いと考えられる
- 同業で時価総額が一回り大きい日本M&AセンターHD(2127)にはブラックロック・キャピタルといった大手海外投資家が株主として存在するが、本銘柄を保有しているか・関心あるかは公表情報では確認できない
- ヘッジファンド主体に販売された場合、マーケットインパクトは相応に出てくる可能性はあるが、本銘柄は流動性が高いため短期的な影響に留まると予想される
- 従って、大きく下落した場合は押し目買いや新規エントリーする良い機会になるかもしれない
海外売出しを実施する背景
- 発行体の「海外機関投資家の株主を開拓したい」意向により海外売出しを選択するケースが多い
- 特に時価総額が1,000億円を超える高成長企業は、IRで定期的に会話・議論できる海外機関投資家を株主に組み入れたい意向が強い
- 何故なら、次のフェース(時価総額5,000億円規模)にステップアップする上で、海外機関投資家のサポートが必須であるためである(残念ながら国内機関・個人は株価をドライブする主体としては期待されていない)
- 売り手の立場では、オーバーナイトでプライシングできるため、ディスカウントはワイドになるものの、価格変動リスクを回避できる点が海外売出しの最大の利点
- 国内売出しの場合、ディスカウント率は3%だが、1週間程度株価を晒す必要があるため株価変動リスクが極めて大きい(株価が下落して2割以上手取りが減るケースも多数ある)
プライム市場に申請中である旨をなぜ同時に開示するのか?
- プライム市場へ申請しているという情報は、未公表の重要事実と考えられている
- 今回の場合、売り手が創業者であるため、未公表の重要事実を知っている立場にある
- 従って、法令上、当該重要事実を開示した上で機関投資家に販売する必要があるため、売出しと同時に公表したと推察される
- 本売出しによってプライム基準の流通株比率が35%を超えるため、近々にプライムに昇格することが見込まれる