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オーナー企業にとってライツ・オファリングは選択しやすい資本政策と考えられる理由

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ライツ・オファリングについて連日記事をアップデートしてきましたが、本日はオーナー企業にとってのライツ・オファリングに着目してみたいと思います

結論として、持分を極力維持(=支配権を維持)しつつ業容拡大ができるライツ・オファリングはオーナーにとっては有効な手法と言えます。その理由について公募増資との比較を交えて解説します

公募増資で持分維持が難しい2つの理由

オーナー企業が公募増資の実施に際して支配権を維持することが困難な理由は以下2点

  1. 公募増資には公平配分ルールが存在。支配権維持目的でオーナー株主に優先的に配分することは原則不可
    • 株式を引受ける証券会社は、投資家から需要があった際には広く公平に配分する義務を負う(公平配分ルールが存在)
    • 特定の第三者に優先的に配分する場合は、その理由・合理性を開示する必要がある
      • 直近、日本ホスピスHD(7061)が売出しを実施。その際に発行済株式の2割弱をスギHDに配分する旨を公表
        • スギHDとは、資本業務提携を締結し、その合理性を開示資料にて説明している
      • 公募増資・売出しでオーナー株主のような会社関係者に優先的に配分する行為は、原則不可(例外として、連結維持や持分法適用維持のために親会社に配分する場合は可)
        • オーナーの支配権維持目的と見做され、一般株主へのメリット・合理性の説明が困難であるため認められないのが通例
    • 楽天G(4755)の公募増資では、オーナー株主である三木谷会長の関係者・資産管理会社が優先配分を受けているが、極めて異例
      • 増資株式数の10%相当の株式を三木谷会長の関係者に配分されたが、以下理由により許容されたと推察
        • 楽天G=三木谷会長という影響力の大きさと、市場が懸念する財務リスクへの対応として、会長のコミットメントが有効と客観的に判断できたこと(寧ろ、状況的にその必要性が高かったと言える)
  2. 多額の資金負担が発生する(現金の用意が必要)
    • 増資時に持分を維持する場合、現金が必要となる
    • 3,000億円の増資をした場合、持分20%保有する株主が持分維持する負担額は600億円
    • 簡単には用意できないため、金融機関からの借入で対応することが想定される
    • 通常は、持株や不動産等自身が保有する資産を担保に差し出したうえで、借入れすることになる
    • 三木谷会長関係者は、増資全体の10%程度、総額300億円の出資を実施。大きな金銭的負担とリスクを負ったと言える
      • 楽天Gの公募増資の希薄化率は25%であったため、完全には持分を維持できたわけではない点は留意

対照的にライツ・オファリングは相対的に持分維持が容易と言える

  1. そもそもライツ・オファリングは持分に応じて既存株主に割当てられる仕組み。権利行使すれば持分維持可能(特段の説明は不要)
    • オーナー株主は、持分を維持したければ、ライツを行使すればよい
    • 公募増資と異なり、株主の権利としてライツを取得するため、特段の説明は必要ない
    • 更に、ライツの行使を表明することで、オーナーが高いコミットメントを示していると市場からは評価される(大半の事例では行使する旨を公表している)
    • ただし、金銭的負担は、公募増資と同様に発生する
  2. 割当られたライツの一部を市場で売却することで、金銭的負担を軽減(又はゼロに)することが可能
    • ライツも公募増資と同様に、権利行使時に金銭的負担は発生するが、ライツ自体を市場で売却できる
    • 権利落後理論価格(TERP)800円、行使価格400円のライツを割り当てられた場合
      • 理論上はライツを400円で市場売却が可能
      • つまり、半分のライツを市場売却し、残りのライツの行使資金に充当すれば、資金負担ゼロで追加出資が可能となる
    • テスHDの事例では、オーナー株主は、一部ライツを売却して行使する旨を公表している(少なくとも三木谷会長関係者のような資金負担は発生しない点は、オーナにとって大きなメリットと言える)

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