本日、サカイ引越センターが売出の中止を公表しました
考えられる中止の理由について考察しました。あくまで推測であり、実際のところは当事者でない限り把握のしようがありません
公式な理由は、「最近の当社の株価及び株式市場の動向その他諸般の事情を総合的に勘案」となっています
その点をご理解の上、ご一読願います
単純に株価下落が理由？その可能性は低い
- 今回の売出しは公表から8/28まで7％程度下落している。過去の売出事例に鑑み、7％程度の下落は十分想定されたはずだ
- また、通常売出しの意思決定は、2ヶ月程度前に実施される。2ヶ月前の当社の株価水準は、4,900円前後で推移していた。足元の株価水準とあまり変わらない
- 通常売出しを実施する場合、主幹事証券は売出人に対して、公表後は余程のことがない限り中止はできない。一定の株価を下回ると売出しを中止するといった取り決めもできない旨を公表前に入念に説明する。そして、ご理解いただいた上で案件を進める
- 売出し中止のトリガー条件がある場合、当該情報がインサイダー情報に該当するため、目論見書への開示が必要になる。そのような開示をして売出しを実することは、市場をミスリードするため、現実的に不可能だからだ
- 過去の売出中止事例では、1️⃣ 2割以上下がった場合、2️⃣ 2020年3月頃のようなコロナで相場が大混乱に陥っており客観的に売出しを執行することが不適切と言えるような状況でのみ中止の判断がなされている
- 本件の公表後株価は、7％程度しか下落していない。株価下落要因だけで中止するとは常識的に考えにくい
- もちろん主幹事証券が売出人である社長や発行会社をうまく仕切っていなかった、コミュニケーションができていなかった、という可能性もゼロではない。ただ、筆者の経験則としてはその可能性は低いと考える
直前に出てきた元引越作業員による未払い賃金訴訟問題が原因？
- 各種報道によると、8/9付で東京地裁立川支部は、発行会社に対して元筆耕士作業員兼ドライバー3名の主張する未払い賃金1,570万円の支払いを命じたとのこと
- この事実自体は8/9に確定している。主幹事証券も把握していて引受審査で訴訟の内容と業績への影響について発行会社に詳細にヒアリングしているはずだ。その上で、必要があれば売出目論見書のリスク情報等で投資家に周知するなどの対応を図るが、今回の目論見書には特段そのような記載がない
- 少なくとも主幹事証券は、今回の訴訟問題は売出しに影響なしと判断して8/21の公表に踏み切ったはずだ
- 8/21の売出公表以降に、引受審査で聞いていた内容以外で、新たな事実が出てきた。それが原因で引受ができなくなった。その可能性もゼロではないが、筆者の感覚としてその可能性も極めて低いと考えている
空売り筋への対抗措置？
- 当社は貸借銘柄である。8/21の売出公表後、貸借取引による空売残高は14.7万株に急増した
- 発行会社、売出人である社長から見ると、空売りの影響で株価が下がっているように見える（事実、株価下落の主要因になっている）。このまま条件決定すると空売りした連中の思う壺だ。と苦々しく思っている可能性は大いにある
- 例えば本件売出しが、東証プライムの流通株比率基準を満たす目的のもの（FPパートナーの売出案件）、あるいはスタンダード維持基準をクリアするためのもの（ナガセの売出案件）、売出人が全量売却を最優先している（芝浦メカトロニクスの売出案件）など、発行会社または売出人にとって絶対に中止できない事情があれば、売出しの決行を優先するだろう
- 本件はどうだろうか？以前の記事で紹介したように、今回の売出しは、みずほ信託銀行の政策保有株の売却意向、或いはオーナー家の資金化をきっかけで売出しを実施したように見える（上述の現在並行して実施されている売出案件に比べ、売出しを中止するハードルは低いように見える）
- 今回売出しを中止したことによって誰が最も被害を受けるだろうか？売出しというイベントに乗じて空売りを仕掛けた投資家である
- 発行会社又は社長が、空売りを仕掛けた投資家に報復したという構図が見え隠れする
- 繰り返しになるが、あくまで想像の域を出ない推測ベースでの考察だ。実際の理由は当事者にしかわからない点はご留意いただきたい
- 公式な説明は、「最近の当社の株価及び株式市場の動向その他諸般の事情を総合的に勘案」した結果であり、それ以上でもそれ以下でもない
- 売出しのイベントに乗じて空売りのポジションを持ち越す場合、このような中止リスクがあるということは、念頭に入れておく必要がありそうだ（POのブラックスワン？）
