IPO,PO関係
ispace(9348):ハイツ・キャピタル・マネジメントに株式と新株予約権を第三者割当
- 2024年3月に海外公募増資により資本増強を実施した当社だが、ロックアップ明け早々に追加の資本増強策を公表した
- 以下の理由から、公募増資の実施は事実上困難であったと考えられる。代替手段としてハイツ・キャピタル・マネジメント(HCM)への第三者割当てを選択?
- 前回公募増資では、海外機関投資家から期待通りの需要が集まらず、募集金額を減額したこと
- 足元の株価(10/11終値661円)は、公募価格871円を下回っており、追加の公募増資は投資家の理解を得にくい
- 今回の増資内容(エクイティ・プログラム契約)は以下の通り
- 本件により、2025年3月末までに1,100万株の希薄化が発生する(希薄化率10.6%)
- 1回につき275万株を発行、計4回に分散して発行する
- 1回目の発行価額は602円(前日終値✖️90%)、調達額は約16.5億円
- 2回目以降の調達額は、今後の株価動向により変動するが、仮に株価が一定とした場合の概算調達額は約66億円となる
- 前回の公募増資で調達した資金使途と同様にミッション3(2026年打上予定)に関連した打上費用に充当予定
- 同時に発行する新株予約権は、時価から2割プレミアムを付した行使価額に設定される(行使価額は固定)。従って、株価が順調に上昇していった場合にのみ行使され、追加的な資本増強が可能な仕組みとなっている
- 1回目の行使価額は802円(前日終値✖️120%)、行使後の資本調達額は約22億円
- 2回目以降も行使価額が802円と仮定した場合、行使総額は約88億円となる
- 新株予約権の調達資金は、主にミッション6(2027年打上)関連に充当予定
- 割当先のHCMは、大手ヘッジファンドであるサスケハナ・インターナショナル系列のファンド。フィナンシャル投資家で比較的短期でのキャピタル・ゲイン狙い(=純投資)の投資家といえる(開示上は中長期保有が期待できるとあるが。。)
- 過去の投資実績としては、3Dマトリックス(7777)、キッズウェル・バイオ(4584)、ACSL(6232)、シンバイオ製薬(4582)、オウケイウェイブ(3808)、メタリアル(6182)などが挙げられる
- いずれも、POの実施が難しい新興のバイオ・宇宙ベンチャーなどが投資対象。大規模なリスクマネーを提供可能な投資家だが、基本的には市場でパラパラと売却してリターンを得ている投資家で、数年のスパンで継続保有している実績はない(少なくとも徐々に売却はしていく投資家)
- 本件においても、時間をかけて市場で売却する=株価インパクトが発生すると想定しておいた方がよいだろう(当社の場合、流動性があるため、業績が堅調に推移すれば、先行事例に比べ株価インパクトは限定的になる可能性はある)
- 以下が当社が想定する時間軸と調達のイメージだ。M2打上が成功し、株価が上昇すれば#2以降も円滑な資本増強が期待できるが、果たしてそう上手くいくのか。#2以降、都度本ブログをアップデートしていきたい
- 因みに筆者は、流動性があり、エクイティ・ストーリも明確、株価に自信があるなら、MSワラントでよくない?というのが初期的な印象だ。本スキームだと、わざわざ発行決議が必要で機動性に欠ける?からだ。この点についても、今後の株価の反応を踏まえて、MSワラントではなく本スキームを採用するメリットについて深掘り・考察していきたい
- また、多額の先行投資が必要であることに鑑みると、リスク・シェアできるストラテジック・パートナーや、公的機関がメザニン・ファイナンス(無議決権優先株、劣後ローンなど)なで調達の多様化ができないのか?POができない新興企業はMSワラントのようなファイナンスしか選択肢がないのか?本邦資本市場の多様化・投資家層の拡大は課題だなと改めて感じる次第だ
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