社債型優先株の概要:配当負担は大きいが、希薄化を回避しつつ信用格付けを維持する観点ではプラス効果のある手法
- 日本政策投資銀行とみずほ銀行が各150億円を出資
- 本優先株は会計上は全額が資本の部に計上されるが、実質は年限5年の劣後ローン
- 年間5.4%の配当負担(年間16億円相当)があり資金調達コストは通常のデットに比べ高い
- ローンの場合、金利は費用計上されるため節税効果があるが、優先株は配当に当たるため、節税効果がない
- 本優先株は、実質的に5年後に償還されるため、デット資金であるが、外部格付機関であるJCRは、300億円のうち150億円を信用格付上の資本として評価
社債型優先株を選択した理由の考察:信用格付け維持が必須だった?
- 信用格付けを維持する必要があるため、875億円全額をデットで調達するのは難しかったと推察される
- 当社の普通社債の格付けはBBB+、劣後債の格付けはBBBー(JCR)
- 格下げとなった場合、特に劣後債はBB格(所謂ジャンク債)に落ちてしまう
- 従って、財務戦略上、格下げは当社にとってNG
- Snow Fox社買収のリリース後、JCRから、「本件M&Aによる当社財務への影響を注視し、必要に応じて格付けに反映させる」旨を公表していた
- 社債型優先株は、会計上資本計上されるため、本件買収後も当社の株主資本比率を3割程度に維持できる
- 今回の買収資金875億円のうち300億円は社債型優先株、残額はローンで調達する方針
- 普通株を希薄化させたくなかった可能性
- 当社は創業家が株式の約4割を保有している
- 安易な増資は、創業家の持分が低下することになるため避けた可能性がある
- 前回の公募増資では、株価が急落したため、発行会社として公募増資に対して良いイメージを持っていない可能性あり
- 当社が前回公募増資を実施したのは2014年3月
- 当時、増資公表から条件決定日まで株価は14%下落、増資公表から受渡日までの下落率は17%であった
将来公募増資はあり得るのか?:最終手段としてはあり得る
- 目先の公募増資の可能性は無くなったと考えらえる
- 一方、当社は本優先株に加え、劣後債も発行している
- 今後新たな資金需要が発生した場合、格付維持の観点からデット調達にも限界が生じ得る財務状況
- 従って、次回の大型調達の際は消去法的に公募増資が選択肢になり得る。その場合、投資家の理解も得られやすいと思料
- 株価も上場来高値水準にあり、客観的に見て公募増資をやるタイミングとしても悪くない環境
- 外食セクターでコロナ禍においても赤字を出さず、増資もしなかった当社は、投資家からの評価も高い
- 前回2014年の公募増資から着実に成長を遂げており株価上昇率は6倍超に達している
- バリュエーションも高い評価がつけられている