IPO,PO関係
アイシン(7259):トヨタグループによる政策保有株の売出し
- 2023年12月のデンソー(6902)の売出し、2024年6月のエクセディの売出しに続くトヨタグループによる持合解消を目的とした売出し事案
- また、デンソーは、2024年3月に豊田自動織機株式(発行済の9.1%を保有)を、最大2年半かけて市場売却する予定である旨を公表している
- 上記のように、既にトヨタグループの持合い解消に対する取り組みは織り込み済みだったため、売出し自体にサプライズはないかもしれない
- 当社は、売出し同時に以下3点を決議している
- 自己株式の消却:既に保有している自己株式(25,140,809株)のほぼ全量にあたる2,500万株を消却
- 9月末を基準に1:3の株式分割を実施
- 1,700万株の自己株式の取得
7/8に条件決定
- 売出価格:5,092円(ディスカウント率:3%)
- 引受価額:4,882円(引受手数料率:4%)
- 公表から条件決定まで0.1%上昇(TOPIXは2.6%上昇)
- 海外販売比率:20%
シンジケートカバー取引が実施される
- 株安の影響を受けて、シンジケートカバー取引による買付けが行われた。買付株式数は91,600株
- その結果、グリーンシューオプション行使株数は、4,987,700株となった(OA株式数より上記買付株式数を控除した株数)
売出しの可能性で5月以降の株価は低迷していた?
- 当社の株価は、2024/4/26の本決算発表を境に軟調に推移してきた。要因は以下2点と推察される
- ①保守的な利益計画と自己株式の取得がなかったことによる失望売りが要因?
- ただ、本決算発表時には6月の総会明けに売出しを実施することが内定していたはずだ
- つまり、売出直後の業績下方修正リスクを回避する観点から、保守的な利益計画とした可能性がある
- また、本決算発表時に自己株式の取得を公表しても、実際の買い付けは(インサイダー取引規制に抵触するため)売出しを公表する迄実施できない
- 性悪説にたつと、売出し直前に自己株式の取得枠だけを公表して、株価を釣り上げたうえで売出しを実施したのでは?騙された!という見方をされる恐れもあっただろう。そのような批判を考慮して、売出しの公表とタイミングを合わせたとも考えられる
- ②昨年末のデンソーの売出し以降、次はアイシン?と警戒されオーバーハング懸念で株価の上値が重かった可能性もある
- 以上2点が株価下落の要因だとすれば、悪材料は出尽くしたと期待しても良さそうだ
- 従って、短期的には売出しに伴う受給悪化の影響を受けるものの、中期的には自己株式の取得のポジティブ要因と今期業績の上方修正期待で株価の反転が期待される(現状PBRx0.67と下値も限定的?)
- また、長期的にはトヨタの業績の影響や株価と連動しそうだ。当社の売上高の3分の2はトヨタ向けだからだ
- 以下のチャートは2020年以降の株価推移だが、アイシンの株価パフォーマンスは、(エクセディと同様に)他のトヨタグループ対比で劣後してきた。今回の売出しを契機にトヨタ自動車とのパフォーマンスのギャップが縮小するのか注目される
当社の中計では2026/3期の営業利益率が劇的に改善する計画
- 当社は昨年2023年に3ヵ年の中期経営計画を公表している
- 売上成長よりも、バランスシートの圧縮と収益性の改善に重きをおいた計画に見受けられる
- 今2025/3期の営業利益予想は2,200億円(前期は1,433億円)、利益率は4.5%(同2.9%)としている
- 流石に来期に営業利益率6%達成するのは、ハードルが高いかもしれないが、その懸念は既に株価に反映されていると思われる
5,000億円の株主還元&成長投資枠を設定している=追加の株主還元余地はある?
- 以下は、中計におけるキャピタルアロケーションだ。5,000億円の追加株主還元と成長投資枠を設定してたにもかかわらず、2024年4月の本決算発表時に、自己株式の取得が公表されなかったことが、上述の失望要因だった可能性がある
- ここでポイントは、現時点において特段大型のM&Aも実施していないということだ。今回の自己株式の取得枠は1,000億円としているが、まだまだ追加株主還元の余地があると評価可能?
- 実際に追加の自社株買いがあるのかどうか、売出実施後もモニターしていきたい
デンソーの株価推移と本件へのインプリケーション
- デンソーが売出しを実施した際の株価推移を改めて振り返りたい。今回の売出しは、デンソーの規模の半分程度程度だが、基本的には似た構造であるため、株価推移については参考になるかもしれない
- デンソーの株価推移の特徴は以下の通り
- 売出観測を受けて株価は急落したものの、決議後は(自己株取得のアナウンスを好感して)一旦は反発
- ただし、条件決定日にかけて株価は再度軟調に推移。条件決定後の申込期間中も、売出しに参加した投資家のつなぎ売りの影響もあり株価は下落
- 申込期間が大底となり、受渡日にかけては小反発するものの、受渡日直後の株価は、需給悪化の影響を受け上値は重く、横ばいで推移
- 徐々に受給悪化の影響が和らぎ、自社株買いの効果が株価に反映され上昇トレンドに入る
- 直後の四半期決算がポジティブサプライズとなり、株価は更に上昇
- 今回のアイシンの売出しは、デンソーに比べ規模は小さいが、売出規模自体は2,000億円を超える大型案件だ。デンソーと同様に個人投資家を中心に販売することから、受渡日にかけてはヘッジ売りが出やすく、株価の上値は重くなりそうだ
- デンソーと同じような株価推移を辿るのであれば、エントリーポイントは受渡日前後が最適だろう。条件決定前にエントリーする場合は、余力を残しておくのが無難だ。また、売出しに参加し、ディスカウントでエントリーするのも有効?(投資は自己責任でお願いします)
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