IPO,PO関係
大倉工業(4221):取引金融機関との持ち合い解消を目的に売出し(PO)を実施
- 売出しと同時に自己株式の取得を実施する。自己株式取得の上限株数は120万株としているが、現状の株価水準(2,775円)で取得可能な自己株式数は約90万株
- 118万株の売出しを実施することで流動性の改善・株主層の拡大を図りつつ、アフターマーケットで90万株の自己株式を取得することで受給悪化を緩和する。25億円は当社の今24年12月期の予想当期純利益43億円の58%に相当することから、大規模な株主還元ともいえる
7/1に条件決定
- 売出価格:2,804円(ディスカウント率3%)
- 引受価額:2,688.36円(引受手数料率:4%)
- 公表から条件決定まで株価は4.2%上昇(TOPIXは3.7%上昇)
売出し+自己株式の取得を実施する背景の考察
PBR1倍割れ解消のためにIR活動・株主還元を強化、政策保有株を縮減(持ち合いの解消)→売出し➕自己株式の取得
- 現状の当社のPBR(実績)は、x0.55と低迷している
- PBR1倍割れへの対応として、中計の着実な遂行によるROE8%への引き上げ(現状7.4%)を行いつつ、資本市場から正しく評価してもらうためのIR活用を積極的に推進するとしている。加えて、持ち合い解消による資本効率の改善も遂行すると明記していた
- 今回の売出しは、発行会社から各金融機関に働きかけたようだ。今回の売出人とは持ち合い関係にある。つまり、持ち合い解消することで、資本効率の改善を図り、PBR1倍割れ解消を目指すという発行会社側の強い意思が働いたのだろう。今回実施する自社株買い(25億円)の一部は、持ち合い解消で取得する資金が原資となるのかもしれない
売出しによるIR効果を期待?
- 持ち合い解消➕株主還元の強化を目的とするのであれば、わざわざ売出しを実施せずに、直接ToSTNeT-3による自己株取得した方が効率的だ
- 売出人もわざわざ時価からディスカウントで売る経済的なインセンティブがない
- 今回わざわざ売出しを実施するのは、IR効果(資本市場での認知度向上)を狙ったものといえよう。当社の時価総額は344億円、本社香川県の化学素材メーカーだ。一般投資家目線では、四季報を全ページ目を通さない限り目に留まらない銘柄ではないだろうか?(恥ずかしながら筆者は、今回の売出しアナウンスで初めて当社のことを認知した)
- ただ、興味深いことに当社の株主数は12,554名も存在する。おそらく株主優待(クオカード、オークラホテル丸亀の優待利用券)目的の株主が多いようだ
- 一般的にPOを実施すると、短期的には受給悪化の影響で株価は下落しやすいが、好業績の割安銘柄は株式市場から注目を集め、株価の水準訂正のきっかけとなることが期待される
- 発行会社は、IR効果を期待して売出人に協力をお願いしたのだろう
- 一般的に売出しを実施する場合、引受審査手続きが必要で通常2ヶ月程度の準備期間を要する
- 事務負担をかけてでも(売出しによる)IR効果を期待したいという強い意思が垣間見える
- 最近売出しをきっかけに見直し買いされるバリュー株も多いため、より注目されるかもしれない
来年度からスタートする新中計に注目?
- 当社は今年度を最終年度とする中計を公表済みだが、注目されるのは来年からスタートする新中計の内容になるだろう
- 当社は、下図(2024年2月の当社公表資料)の通り、すでに長期経営目標を掲げている
- 具体的なKPIは、2030年に売上高を1200億円、営業利益を100億
- 2023年度の売上高実績は788億円、営業利益は47億円
- 長期計画通りに成長するならば、売上高・営業利益の7年CAGRはそれぞれ6.2%、10.7%となる
- 現時点で2030年の計画の蓋然性を評価するのは難しいため、今期予想PERはx7.8、実績PBRはx0.55と低位に甘んじているが、新中計では2025-2027の計画が公表される予定だ
- 順調に成長するストーリーが描けるようなら株価の水準訂正のきっかけになる可能性があるため、注目していきたい
-IPO,PO関係
-PO, 売出し, 大倉工業, 株価, 買いか