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ユー・エス・エス(4732)による日本版ASRについて

株式会社DMM.com証券

日本版ASRの仕組みについて解説

ASRとは何か?

  • ASR:Accelerated Share Repurchase(加速型自社株買い)の略
  • ASRは、発行会社が一度に大量の自己株式を取得する方法として米国で広く使われている手法
  • 特定の大株主がいない場合、発行会社は市場から時間をかけて自社株買いを行う必要がある
  • ASRは、特定の大株主がいなくても、一度に大量の自己株式を取得できるのが最大の特徴

ASRのプロセスは以下の通り

  1. 証券会社が、株を借りてきて、空売りする形でToSTNeT3の自己株式に申し込む
  2. これにより発行会社は、ToSTNeT執行日に大規模な自己株式を取得できる
  3. 証券会社は、空売りのポジションを解消するために、市場から一定の期間をかけて株式を取得して借株を返済する
  4. 発行会社は一旦、ToSTNeT3にて自己株式を取得することになるが、実質的な取得株式数は、証券会社が市場で買付けた株式数と同数になるように事後的に調整する
  5. 証券会社が市場で買付けた株数と、ToSTNeT3により発行会社が買付けた株数の差分を、同時に発行する新株予約権を活用して調整する
    • 日本版ASRと言われるのは、会社法上、発行会社が証券会社に自己株式を交付する際には新株予約権を活用する必要があるため(米国では、普通に株式と現金を差分調整できる)

ToSTNeT3による取得する株価が1,000円、自己株取得総額が500万円の場合のプロセス

  • 一旦発行会社はToSTNeT3により5,000株の自己株を取得し500万円を証券会社に支払う
    • ケース1:証券会社の市場買付の取得価格が1,250円の場合
      • 証券会社は4,000株を市場買付することになる(500万円➗1,250円)
      • 借株の返却に不足する1,000株は、新株予約権を行使して発行会社より取得
      • 証券会社は市場で買付けた4,000株と発行会社より交付される1,000株の計5,000株を借株の返済に充てる
      • 発行会社は当初は5,000株の自己株を取得するが、証券会社からの新株予約権の行使を経て、最終的に4,000株の自己株式を取得する結果に
    • ケース2:証券会社の市場買付の取得価格が800円の場合
      • 証券会社は、借株の返済のために5,000株を市場買付するがその負担額は400万円(5,000株✖️800円)
      • 差額の100万円は、証券会社が新株予約権を行使して発行会社に支払う
      • 証券会社は、5,000株の借株を返済する
      • 発行会社は、当初500万円で5,000株の自己株を取得するが、証券会社から新株予約権の行使により100万円を支払われるため、実施的な負担額は400万円となる

ユー・エス・エスのケースでは、ケース1とケース2において使用する新株予約権が異なるため、自己株式の取得と同時に2種類の新株予約権をSMBC日興証券に割り当てている

なお、会社法の関係上、ケース1の新株予約権は行使に際しての払込金を1円に、ケース2では行使に際して交付する株式数を100株としている。本来、ケース1では0円、ケース2では0株としたいが、会社法の関係で新株予約権の行使に際しての払込金又は交付する株式数をゼロにできないため、わかりにく設計になっている

ASRのメリット・デメリット

メリット

  • 特定の株主からの売却意向がなくても、1日でまとまった株式数を確実に取得することができる
  • 特に、決算期末を跨ぐケースなどでは、配当負担額の軽減につながる
  • 資本市場に対して、自己株取得(=株主還元)のコミットメントを示すことができる(アナウンスメント効果)
  • 平均取得単価を抑えることが期待できる(本件の場合、取得単価はVWAP✖️99.9%であり0.1%安く買える)

デメリット

  • とにかく分かりにくい
  • 普通の人がプレスリリースを読んでも理解することが困難である
  • CFOが、取締役会メンバーに説明し理解をえるのもハードルが高い(スキームが複雑なため)
  • 従って、現時点では先行事例は極めて少数
  • 筆者が認識している限り、先行事例はジョイフル本田と日揮ホールディングス、小林製薬と少数

つまり、スキームが複雑であるため現時点で日本版ASRを実施するケースは少ない。今後どこまで普及するか未知数のスキームと言える

USSのケースでは自己株式の取得規模は500万株程度(発行済株式数の2%程度)とそれほど大きくないため、必ずしもASRのスキームを活用する必要性はない。よって、資本市場に対して当社が掲げる株主還元策・資本政策の高いコミットメントを訴えたいためにわざわざ複雑なスキームを採用したと推察できる

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