- 2024年11月28日に発行決議され、12月17日に行使が開始された新株予約権(ワラント)だが、なんとすでに実質全額行使が完了してしまった
- 本記事(続編)では、どのような仕組みで実質全量行使が完了したのか、いかに考えられた商品設計だったのかを解説したい
- なお、そもそも今回のワラントの内容・発行時の発行会社側の狙いに関する考察は前回の記事を参照いただきたい
今回のファイナンスの凄いところ
2024年内は行使価額を高く設定しているため、行使が始まるのは翌年からの想定だった
- 今回のワラントだが当初の行使価額は3,288円に設定されている。発行日の終値(2,333円)に対して4割もプレミアムを付した水準だ
- 凡人である筆者は、以下のように考えた(まさか年内に3,288円を超えるとは全く想像していなかった)
- 税金対策で年内の行使は想定せず来年1/7から行使ができるように設計(詳細は前回記事参照)
- 行使価額修正が開始される1/7から遡る11営業日前は12/17(行使開始日に該当する)
- つまり、12/17から毎営業日5-10億円程度空売りし、積み上がった空売り株数分のワラントを1/7に行使すれば、年明け早々から資金調達が可能となり、BTC買付けが可能となる
- その際に発行する株式のディスカウント率はVWAP平均値から3%ディスカウントした水準だ。通常のMSワラントのディスカウト率(8−10%)に比べ有利な条件。これは日本版ATMオファリングだ!
- 年明けから開始されるのになぜ11/28に公表したのだろう(はやくない?)この点については、12/13に臨時株主総会を開催することが関連していると考えた。株主総会時に次のエクイティ・ファイナンスはどうするの?という質問が殺到するのは間違いない。その際に事前に開示しておかないと、丁寧な回答はできない(色々検討中ですと回答した直後にワラントの発行決議開示をするのは株主への説明責任という観点から適切ではないと考えたのだろう)
サプライズ(その1):株価が3,288円を超えて年内行使が可能に!
- 私はBTC/メタプラネット相場を甘くみていた。まさか2週間程度で株価が4割以上になるとは想像していなかった
- そこで凡人である私は以下のように考えた
- 行使価額(3,288)を超えたので、EVOは空売りを開始するだろう(実際に12/13時点で145.6万株相当の空売りを実施)
- そして、空売りした株式数分について年明け1/6に行使すれば、平均空売り価格と3,288円の差額がEVOの利益となる
- 凡人はここで一つ重要なポイントに気付いた。なぜ行使価額修正開始日が年明け初日の1/6ではなく1/7に設定していたのか?これは、年内に株価が3,288円を超えた際に、予め空売りしておき年明け最初の営業日である1/6に行使することにより、税金対策をしつつ最速で資金調達を実現するためだったのか!
- 普通、そこまで想定してワラントを設計します?(私自身、前職でワラントやCBを設計し顧客向けにオリジネーション活動をしていたため、この点に気付いた時は脳汁が飛び出てしまい感動しました)
- これにより、EVOは290万株分を1/6に行使するだろう。すると1月中旬にメタプラネット側に95億円に資金が入り、晴れて1月中旬にBTCを買い付けることが可能となる(今回のワラントは大成功だ!)
サプライズ(その2):社債を活用して年内にBTCを購入!
- 12/13時点でEVOが空売り残高を報告したことで、上述のサプライズ(その1)までは想像できたのだが、12/17に更なるサプライズが発生する
- なんと発行会社側からワラント保有者であるEVO宛に最大95億円の社債を発行する開示があった
- 社債の主な特徴は以下の通り
- 発行予定額(最大)は95億円(290万株✖️3,288円に相当する金額)
- 利率はゼロ
- 償還日は2025年6月だが、EVOはいつでも繰上償還可能
- EVOは年明け1/6に95億円相当のワラント行使代金を払込予定だ。そこで、95億円を社債という形で年内にEVOから前払いしてもらうことでメタプラネットは行使完了前に満額のキャッシュを手にすることになる。これにより年内にBTCを購入することが可能となる
- メタプラネットにとっては、四半期毎のBTCイールドの極大化が最重要KPIだ。年内にBTCを買い付けることには大きな意味がある
- また、EVO側からみても、すでに95億円相当のワラントは空売り済みで利益も確定している。決済を年明け1/6を予定しているところ、発行会社側の要望を受け、前倒しで建て替えただけだ(ワラントの行使代金入金と同時に社債を繰上償還すれば、実質的なカウンターパーティリスクをとっているのは2週間程度だ)
- 以上今回のファイナンスにおいては2つの大きなサプライズがあった。税金対策をしつつ、年内に95億円のBTCを買い付ける。11/28時点で凡人では全く想像できなかったが、発行会社とEVOはこんなことも想定して今回のファイナンスを設計していたのだ(恐れ入りました)