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IPO,PO関係

ニッコンホールディングス(9072):目論見書を活用しない売出し(PO)

株式会社DMM.com証券

  • 株主からの政策保有株の売却要請を受けての売出し。売出し実施後に自己株式の取得を予定。また、9月末を基準に1:3の株式分割の実施を公表した
  • 今回の売出しの最大の特徴は、目論見書を使用しない売出しである点だ

6/17に条件決定

  • 売出価格:2,898円(ディスカント率:3%)
  • 引受価額:2,778.48円(引受手数料率:4%)
  • 公表から条件決定まで株価は2%上昇(TOPIXは2%下落)

目論見書なし売出しの特徴、通常のPO、リテール向けブロック・オファーとの相違点

  • 通常の売出し(PO)と異なる点は以下の通り
    • オーバーアロットメントによる売出しがない
    • 申込期間を設定しない(通常は条件決定日の翌日から2日間、申込期間を設定)
    • 申込期間がないため、安定操作取引を行わない
    • 原則、主幹事の単独引受け
  • 目論見書なし売出しは、リテール向けのブロック・オファーに近い売却手法で、いわゆる簡易版POといえる
    • ブロック・オファーの場合、
      • 発行会社は直接関与せず、証券会社が売却人から株式を買取り、社内アナウンスのうえ営業員がリテール投資家に販売する
      • 一般的な売却可能な規模は、発行済の〜3%程度、出来高の数日分。従って、PO対比売却規模が限定的な場合によく活用される手法だ
    • 目論見書なし売出しは、ブロック・オファーと異なり、発行会社が関与するため
      • 発行会社が適時開示する(売却する株主名・株数を含め全体像が公になる)
      • 通常のPOに準じた引受審査手続きを実施するため、発行会社に相応の事務負担が発生する
    • なお、目論見書なし売出しは、原則申込期間を設定しないため、条件決定日=申込日となる。営業員からみると、条件決定(通常16:30頃)後、速やかに顧客に約定連絡・事務処理が必要となる。通常のPOは2日間あるため、注文の数を沢山こなせるが、目論見書なし売出しは時間に制約があり、営業員に負担がかかる。必然的に、販売可能額も通常のPOに比べて限定される
      • 本件は60億円と規模が限定されるため、目論見書なし売出しの執行が可能と判断したのだろう
      • 最近の同様の先行事例でも規模感は同一であることが確認できる
        • 2022年3月、ミルボン(4919):規模45億円、主幹事:大和
        • 2023年5月、日本エスコン(8892):規模48億円、主幹事:SMBC日興

なぜ、わざわざ目論見書なし売出しを選択したのか?(考察)

  • 今回、株主からの売却要請を受けた株式数は212万株。当社の財務状況に鑑みると、全てまたは一部を自己株取得で対応することも可能だったはずだ
    • 実際、売出し実施後に130万株(上限)の自己株式を取得する予定だ
    • 130万株をToSTNeT3で取得し、残りの82万株をリテール・オファーで対応することも可能だったはずだ
  • 上記を踏まえると、発行会社としては、目論見書を作成するほどのコスト(1000万円程度の費用がかかる)は負担したくないが、一定のIR/PR効果を期待して本手法を選択したと推察される

中計の認知度が低い?中計の蓋然性が高いのであれば割安?IR効果が狙いか?

  • 当社の時価総額は1,853億円.中堅の運輸セクター銘柄だが、時価総額の割には知名度は低く、流動性も少ない印象だ
  • 知名度のない当社ではあるが、昨年8月に3ヵ年の中計を公表している。26年3月期にかけての売上高のCAGR目標値は9.7%を掲げている
    • 2024年3月期に関しては、売上高の予実は2300億円に対して2,223億円、営業利益の予実は220億円に対して212億円となっており、若干未達である点は留意が必要
  • 6/7現在の株価は、今期予想ベースのPERはx10.9、実績PBRはx0.75で評価されている。中計が着実に達成されるのであれば、見直される余地があるかもしれない
  • また、当社は前期より累進配当且つ配当性向40%を株主還元の目安に設定している。現在の今期予想配当利回りは3.6%(配当性向「40%相当)だ。加えて、継続的に自己株式の取得を実施しており、総還元性向は50%程度で推移している
  • 本日、公表した自己株取得額は上限30億円だ。仮に30億円の自己株取得を実施した場合、今期の総還元性向は57%と試算される
  • 当社としては、早期にPBR1倍達成を目指している。今回の売出しをきっかけに割安・安定成長配当銘柄として注目してもらうことで、株価の水準訂正を期待しているのではないだろうか?

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