MSワラントの概要
新株予約権(ワラント)の潜在株式は250万株(発行済株式の11%、自己株を除いた発行済の15.2%)
当社の1日平均売買株数は10-15万株であることから、潜在株は一日出来高の20日分相当
流動性対比、発行済対比、規模感としては平均的なMSワラントと言える
割当先は大和証券
ワラントの行使価格は、行使期間中の行使時の株価から8%ディスカウントされた価格に修正される
下限行使価格は2,300円。つまり、株価が2,500円(✖️0.92=2,300)以下になるとワラントの行使が進まなくなる
つまり現状より2割以上株価が下がらなければ、時間をかけてワラントの行使を進めることで資金調達を実現できるスキーム
株価により調達額は変動するが、現状株価水準で70億円程度の資金調達ができる仕組み
MSワラントを発行した背景と想定される市場の反応の考察
ワラントの行使に際しては、保有している自己株式を活用(現状630万株の自己株を保有)
3月末時点のバランスシート上の自己株取得簿価は約2,000円
足元の株価の勢いに乗じて、過去に取得した自己株式を高い価格で処分したいという意図が垣間見える
一方、以下の点から一部の投資家からはなぜワラント?投資は、手元現金またはデット調達すればいいのでは?と反論も出てくることが想定され初期的には株価にネガティブに作用しそうである
- 自己資本比率は90%の無借金企業
- 現預金が220億円ある(総資産640億円の3分の1)
- 現状株価はPBR1倍未満
- 資金使途がM&A資金と不動産取得?具体的に買ってから資金調達しないの?
- 証券会社が儲けすぎでは?(8%ディスカウントは証券会社が儲けすぎでは?)
エクイティファイナンスをやる以上このように批判はつきものである
でも、本当に本件ファイナンスはNGなのか?
その答えは発行決議時に結論を出すのは難しいというのが私見
MSワラントを実施する企業に対するは評価は本当にネガティブ?
以下は私見だが、MSワラントを実施する企業を一概にネガティブに捉える必要はないと考える
MSワラントは公募増資に比べて評価に時間を要する
公募増資に比べて将来のM&A資金など曖昧なケースが多い(証券会社の引受審査も公募増資に比べて緩い)
従って、実際にどのように資金を使ってどのように利益に結びつくのかを発行決議段階では評価が難しいのがMSワラントの難点である
初期段階で投資できる投資家は経営陣を信頼していてよく理解している投資家に限られる
現実問題、私は前職で色々MSワラント発行に関わってきたが、機関投資家からはワラントの評判は悪いのが実態
コーポレートファイナンスを勉強した頭のいい機関投資家の方々にはMSワラントは邪道に見えてしまうのが現実である
ただ、MSワラントを実施した企業でも、良い企業は良い企業であり、すべてNGとするのは勿体無い
MSワラントを発行した企業に新規に投資する場合は、ワラント発行後に実際に資金をどのように使ったのか、その結果業績が拡大したのかを時間をかけて冷静に評価することが肝要
或いは、既に過去の実績から経営陣に対して絶大な信頼を持っているのであれば絶好の押し目買いの機会にもなりえる
次回は、MSワラント発行した場合、テクニカルにどのタイミングで買いを入れるべきか考察します