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IPO,PO関係

稲畑産業(8098):住友化学が保有する株式を売出し(PO)

株式会社DMM.com証券

案件概要

1/15に条件決定

  • 売出価格:3,009円(ディスカウント率:3%)
  • 引受価額:2,883.6円(引受手数料率:4%)
  • 公表から条件決定日まで株価は3.7%下落(同期間TOPIXは5.5%上昇)
  • 従来、この規模の売出の場合、仮条件ディスカウント率は3〜5%に設定される。しかし、本日後場に株価が急騰したため、売出に参加する投資家に配慮し、ディスカウント率は4%に決定したと推察される
  • 今回条件決定の開示時刻が17:40と遅かった(通常は17時までに開示される)が、以下のテクニカルな要因と考えられる
    • 前述の通り、ディスカウント率を3%ではなく4%にすることを売出人と合意する必要があり、調整に時間を要した
    • 売出人である住友化学は、今回の条件決定を受けて、特別利益が約230億円計上される見込みである旨、新たに開示した(従来は240億円としていた)。フェア・ディスクロージャーの観点から、両社の開示時刻を合わせるために余裕を持った開示時刻にしたと考えられる

前期末において上場会社の政策保有株は164億円相当保有しているが積極的に縮減している

  • 当社は、中計にて政策保有株の縮減方針を掲げている
  • 24年3月期時点において上場株式39銘柄、164億円相当の政策保有株式を保有している
  • 今期も16銘柄を売却して約28億円の特別利益を計上している
  • また、当社は今回売出人である住友化学の株式:5,217,000株(18億円相当)を保有している
  • 政策保有株式の売却資金は株主還元に活用することが期待されている点はポジティブに評価できそうだ

配当方針:累進配当・総還元性向50%

  • 今期を期限とする中計期間中の配当方針は、以下の通り。高配当・バリュー株として個人投資から一定の需要を集めそうだ
    • 減配しない(累進配当)
    • 総還元性向50%を目処とする
    • 政策保有株の売却資金は、財務状況等を勘案のうえ、追加で株主還元を行う
  • 売出し実施後には来期から新たな中計がスタートする。来期以降、株主還元方針をさらに強化するのかどうか、注目だ

売出人の住友化学は最大240億円の特別利益を計上予定。他銘柄も売却?

  • 住友化学は、今期も営業赤字となる見込みで二期連続の赤字。厳しい事業環境にある
  • 政策保有株式については、7割削減し、500億円のキャッシュを創出する方針。また下記の通り余資活用、その他資産売却を含め総額1,500億円の資金を確保する方針だ
  • その一環として今回、稲畑産業に株式売却を打診。売出しを通じて株式を売却することで、財務体質の改善を急ぐ
    • 稲畑産業の株式売却は、持分法適用会社であるため、政策保有株ではなく、「その他資産売却300億円」の一部に該当するとのこと
    • 今回の売却で200億円程度の資金を調達することが可能だ。残り100億円はどうするのかは未定だ
    • なお、住友化学は、当社以外の持分法適用会社として住友精化(4008)を30%、住友ベークライト(4203)を21%保有している
  • 政策保有株は、日本触媒(4114)、住友不動産(8830)、三井住友(8316)、住友林業(1911)などを保有している
  • 住友化学の持分が大きい、住友精化・住友ベークライト・日本触媒あたりは売却の可能性が意識されると株価の重しとなる可能性があるため留意が必要だ

なぜ年明けの公表だったのか?タイミングについての考察

  • 一般的に公募売出しなどのPOは、四半期決算発表から四半期末までの間に実施されるケースが多く、本件のように3Q末明け・新年早々に実施する事例は少ない
    • 実務担当者も、年末を挟んで準備する必要があり正月はゆっくり休めない
  • 本件はなぜ、このタイミングで実施することにしたのか?考えてみたい
デンソーPOとのタイミング重複を回避?新NISA適用後1号案件とすることのIR効果が狙い?
  • 昨年11月-12月のウィンドウはPOラッシュであった。特にデンソーのPOは6,000億円を超える大型案件であり、同じタイミングでPOを実施した場合、証券会社の営業員はデンソーにより注力する可能性がある。投資家の関心もデンソーに行きがちだ
  • 従って、IR効果の観点からデンソーと同じタイミングで実施するのは好ましくなかったといえる。デンソーも本件も主幹事は野村。日程を年明けに誘導することは可能だ
  • 年明け1号案件となった稲畑産業だが、これには大きな意味がある。新NISAがスタートして最初のPO案件となる。当社は高配当銘柄として個人投資家からも一定の人気がある。長期志向・配当目的の個人株主(=安定株主)へアプローチするうえで新NISAがスタートした年初のタイミングで勧誘した方が効果的だろう(新NISA口座はネット証券が中心で、野村の新NISA客は限定的かもしれないが。。)

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