東急のCBについて、以下の通り案件概要とCB発行の背景・狙いをまとめました
CB投資家のヘッジ用の自己株取得(潜在株式の3割程度)に加え、政策保有株主の売却意向にも自己株取得で応じる設計
しかも本CBは、ほぼゼロコスト・ゼロ希薄化になるように工夫されており、株価への影響も限定的と考えられます
詳細は以下参照ください
案件概要
- 東急がユーロ円CB600億円の発行を公表(5年債300億円、7年債300億円)
- 300億円を渋谷再開発プロジェクトに、300億を自社株買いに充当
- 転換価格は、5年債が2,124.5円(終値から17%のプレミアム)、7年債が2,033.5円(同12%)
- CB発行に伴う潜在株式数は、約2,887万株(自己株除きの発行済株式数の4.7%相当)
- 同時に1,652万株の自己株をToSTNeT3にて取得(自己株除きの発行済株式数の2.0%相当)
- 取得する自己株1,652万株のうち、946万株は政策保有株主が応募する予定
- 差額の706万株は、CBヘッジファンドの空売りニーズに対応する想定(CB潜在株の33%相当)
本CBのメリット
- 1️⃣ 実質的な希薄化は限りなくゼロに近く、ゼロクーポンで資金調達できる
- 本CBの実質的な潜在株の対発行済比率は、ToSTNeT3で取得する自己株を控除した2.7%と極めて小さい
- 現金決済条項を行使することで2.7%を更に縮減可能
- 現金決済条項を発動すれば、満期時の株価水準により変動するが、交付する株数を更に1/3から1/2程度に縮減できる
- 低コストのCBを活用することで調達調達手段の多様を図れる
- 2️⃣ 持合先の株式を自己株取得することで、受給悪化の影響を回避し、資本の効率化を図れる
- 資金負担が発生せず(ほぼ希薄化・コストゼロのCBで手当)
- 3️⃣ 持ち合い解消によるガバナンスの改善をアピールできる
転換抑制(=希薄化抑制)を企図した商品設計
本CBには転換に伴う希薄化を抑制させるオプションが付与されている
満期時に株価がCBの転換価格を上回っていた場合、通常は転換行使され希薄化する
本CBは、発行会社の裁量により、本来交付される株式の一部を現金で買い戻すことが可能
現金決済条項により交付される株式数は、株価水準により変動するが以下のように算出される
例:額面100万円のCBの転換価格が1,000円のケース
- 通常のCBと同様に株式転換されると
- 1,000株の希薄化が発生 100万円➗1,000円=1,000株
- 現金決済条項が行使されると
- 1️⃣ 満期時株価が1,500円の場合、交付する株式数は本来の水準の3分の1に縮減される
- 1,500円✖️1,000円=150万円が転換価値
- 額面100万円は現金で交付、転換価値と額面の不足分を株式を交付
- 交付する株式数は333株となり、本来交付する株数の3分の1に削減可能
- (150万円-100万円)➗1,500円=333株
- 2️⃣ 満期時株価が2,000円の場合、交付する株式数は本来の水準の2分の1に縮減される
- 2,000円✖️1,000円=200万円が転換価値
- 額面100万円は現金で交付、転換価値と額面の不足分を株式を交付
- 交付する株式数は500株となり、本来交付する株数の2分の1に削減可能
- (200万円-100万円)➗2,000円=500株
- 1️⃣ 満期時株価が1,500円の場合、交付する株式数は本来の水準の3分の1に縮減される