IPO,PO関係
大成温調(1904)売出し(PO):創業家の売却意向を受けて売出しを実施
- 売出人の水谷日出夫氏は水谷社長の親族と思われるが、会社の役員ではない。日出夫氏からの売却意向を受けて、自己株式取得と売出しを実施する
- 日出夫氏は、現状55.6万株保有しているが、10万株を自己株取得(ToSTNeT3)に応募、OA含めた売出しで45.5万株を売却する
なぜ岡田取締役は100株売却するためだけに売出人になったの?
- 今回の売出しでは、岡田取締役が100株のみ売却するために売出人に参加している。100株?なぜ?
- これには金商法上の理由がある。おかしなルールではあるが、金商法上の売出しにおいて売出人になれるのは以下に限定列挙されている
- 10%以上を保有する株主(主要株主)、設立発起人、会社関係者(役員)、登録金融機関
- 水谷日出夫氏は、上記のいずれにも該当しなかったのだろう。その場合、金商法上の売出しが成立しないため、以下2通りの対応が必要となる
1:(登録金融機関である)野村證券が売出人となって売出しを実施する
- 直近では、売出人になれないトヨタが浜松ホトニクス株式を売却する際に採用されたスキームだ
- 浜松ホトニクスの売出しでは、トヨタから一旦野村證券が買取り、野村證券が売出人となるやり方だ。
- 筆者が実務を担当していた際には、本手法を二段階売出しスキーム或いは腹貸しスキームと呼んでいた
- ただ、このスキームには問題点が一つある。単独引受ができないため、シ団を招聘する必要がある(浜松ホトニクスのケースではシ団を招聘しているので問題ない)
- 単独引受の場合、安定操作ができないため実質的に売出しが不可能となる(売出人=引受人となり、自己売出しという形式となり、安定操作取引ができない。そのため、安定操作取引期間のある売出しでは、単独引受は不可とされている)
2:他に売出人になれる者を売出しに参加させる
- 今回の場合は、野村の単独引受のため、上記1のスキームは不可だ
- その場合、誰か売出人になれる人を巻き込めば良いのだ
- 売出人要件を満たす人・法人が一人でもいれば、他の売出人は売出人要件を満たしていなくても、売出人として売出しに参加可能であるとの見解を金融庁が出している
- 本件では岡田取締役は会社役員であるため、売出人の参加要件を満たしている。したがって、岡田取締役が売出人として参加すれば、日出夫氏はあいのりすることが可能になる
- おそらく発行会社と主幹事の間で以下のようなやり取りがあったのではないだろうか?(個人の想像です)
- 発行会社:日出夫氏からの売却要請を受けて、主幹事である野村證券に売出しができないか?相談
- 主幹事:(規模が小さいので)単独引受を前提として売出しの主幹事をお受けしたいと回答。ただ、上記の問題があるので誰か売出人を加えてくれないかと相談
- 発行会社:であれば岡田取締役が100株だけ売出しに協力すればよい?
- 主幹事:はい。ぜひお願いします
中計における目標値:ROE8%以上
- 現在当社は、26/3期を最終年度とした中期経営計画を策定している。収益性が改善してきている点が大きな特徴だ
- ただ、(業種の構造的な問題ではあるものの)営業利益率5%以上の目標に対して、直前期の実績は4.9%となっている。今後更なる収益性の改善余地があるのか?がポイントになりそうだ
- ROEに関しては8%以上を目標としているが、こちらも直前期には7.7%まで改善(PBRも1倍超を達成)
- 大きな役割を果たしたのは、アドバンテッジ・アドバイザーズ(AA)の可能性がある。発行会社は、2022年4月にAA宛に新株予約権の第三者割り当てを実施している。ただ、引き続き新株予約権が潜在株として存在している点には留意が必要か
- 行使価額:2,122円、潜在株式数:126万株
- 売出実施時点までに約8割は行使済み。2割は未行使=潜在株式(発行済みの4%程度)として残っている
- 行使期間は2026年4月まで。ただし、ロックアップの対象となっているため、受渡日から90日間は売却不可
クオカードの優待が手厚い
- 当社は年2回株主優待を実施している。具体的には300株以上保有で、クオカードを年間16,000円贈答している
- 株価4,000円換算の場合、120万円で1.6万円(優待利回り1.3%)、360万円で6万円(優待利回り1.6%)
- クオカード大好き個人投資家からは注目される可能性がある
- 現状は株主数5,000名程度だが、将来株主数が急増した場合には、優待の負担が大きくなるため、優待内容が改悪される可能性がある点には留意が必要かもしれない(流石に売出し直後にそのような改悪は想定しにくいが。。)
- 現状のPBRx0.9、予想配当利回りは3.4%。クオカードを楽しみながら気長に成長を見守ってほしいというのが会社の願いだろう
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