IPO,PO関係
ヤマイチ・ユニハイムエステート(2984):不動産開発のために公募増資を実施
4/8に条件決定
- 募集価格:923円(ディスカウント率:3.5%)
- 払込価額:865.58(引受手数料率:6%)
- 公表から条件決定まで株価は、4.4%下落(TOPIXは1.5%下落)
- 希薄化率に比べると株価下落は限定的となったが、出来高が少ないため受渡日(4/16)に株価インパクトが発生する可能性がある点に留意が必要だ
増資を急いだ背景の考察
- 2022年6月にIPO(スタンダード上場)。その際に15億円程度の増資を実施しているが、今回は上場後初のPOとなる
- 公募増資の公表日にあわせて今期業績予想を修正(売上は下方修正だが利益は上方修正)している
- 業績修正後、希薄化考慮後の今期予想PERはx7.3(増資前はx6.1)
- 類似の不動産デベロッパー対比でディスカウント評価されている?ディスカウント要因は、1️⃣事業規模が小さいこと2️⃣株式の流動性が低いこと3️⃣財務レバレッジが高いことなどがあげられる
- 需給悪化懸念、POのタイミングにサプライズがあるため、短期的には株価が下落する可能性がある。ただ、バリュエーションの観点では、株価が大きく下落した場合はエントリーのよい機会となりえる?
- 今回のPOは、公表のタイミングがユニークだ。本来5月の本決算発表後にPOを執行した方が株主にはわかりやすいが、あえて期跨ぎのタイミングでPOするのはなぜか?以下の通り考察した
3月決算企業が本決算発表を待たずに4月に公募増資をするのは稀。かつ、当社の場合、前回IPO時の資金はまだ充当していない。市場から、なぜ公募増資を急いだのか?を問われる可能性がある
- 一般的に決算期が3月の会社が公募増資を実施する場合、4月のタイミングを避けることが多い。なぜなら、ファイナンス直後に本決算が発表され、当該発表時に、新年度の業績予想が新たに開示されるからだ
- 新たなガイダンスを株価に折り込ませたうえで投資家に勧誘するのが教科書的なやり方となる
- 当社の場合、以下の通り中期経営計画を公表済だ。よって、2025年3月以降の業績予想値が投資判断材料にはならないともいえるが、、、
- また当社は、2022年6月にIPOを実施。その際に約15億円の増資を実施している。ただし、そのうち約11億円については、2025年3月期に充当予定としており、まだ充当していない状況だ。IPOに参加した投資家にとっては、え?まだ使ってないのにおかわりPOするの?という初期的な反応があっても不思議ではない
- 当初2024年3月期までに充当する予定だったが、許認可の遅れ等で、充当時期が期ずれとの説明
- なお、IPO時の主幹事は野村だったが、今回のPOの主幹事は大和だ(理由は不明だが、野村が断った可能性がある?)
足元不動産取得資金でBSと借入金が急増。借入金のリファイナンスが必要だった?銀行からのプレッシャーで公募増資を急いだ?
- 当社のバランスシートと、借入の状況を確認してみよう
- 今期に入って、販売用不動産が急増、それに伴い借入金も大きく増加していることが確認できる。不動産の開発期間が長く投資回収に時間を要するビジネスモデル(多額の運転資金が必要)であることが伺える
- 当社は、2023年9月1日に期限7ヶ月で39億円の借入を行なっている(埼玉県朝霞市の販売用不動産取得資金)。この借入返済期限は2024年4月1日と推定される
- 当社は元々近畿圏を基盤とする不動産デベロッパーだが、朝霞市のプロジェクトは関東エリアでの初の大型案件。成長ストーリーの観点ではポジティブに評価される余地がある
- 一方、当該資金はリファイナンスが必要と考えられるが、銀行からみると更なる与信の提供には、増資を要求してもおかしくない財務基盤といえよう
- 財務基盤の強化が急務であったため、2024年3月期中に増資したかった可能性がある
当社の今2024年3月期の業績は、3月に集中している。引受審査の観点(今期業績の達成確度の確認)から、ギリギリまで月次の進捗を確認する必要があった?
- 問題は、当社の今年度の業績は3月に利益が集中しており、2023年12月期時点における経常利益の進捗率は36.8%にとどまる
- 引受証券会社の立場からすると、今期の業績予想が達成できるのか、ギリギリまで月次の業績動向を見極める必要があったと思われる
- つまり、今季中に公募増資を実施したがったが、引受審査の観点から、3月末の公募増資公表(4月中旬の払込)に至ったと考えられる
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