IPO,PO関係
トモニホールディングス(8600):地銀による久々の公募増資(PO)
案件概要
12/13に条件決定
- 募集価格:366円(ディスカウント率:3%)
- 払込価額:350.88円(引受手数料:4%)
- 公表から条件決定日まで株価は20.7%下落(TOPIXは0.5%上昇、NF銀行業ETFは2.6%上昇)
- 同期間は、マイナス金利観測が浮上したこともあり、銀行株はTOPIXをアウトパフォームしている期間であった
- それにも関わらず、同社の株価は2割も下落しており、市場から厳しい評価を受けたと言わざるを得ない
12/14-15の安定操作期間に2,518,400株買付け
- 大和証券は安定操作取引で251万株を市場買付け
- オーバーアロットメントの売出しで売却した420万株は、大和が株主から借りて売却している(大和は420万株をショートポジションを保有)
- よって420万株は当該株主に返却する(ショートカバーする)必要がある。返却方法は以下3通りの方法がある
- 安定操作で買い付けた株式(募集価格の366円を維持するために買付けが行われる)
- シンジケートカバー取引で買い付けた株式(引受価額の350円を下回った場合のみ買付けが行われる)
- 第三者割当増資に申込んで発行会社から交付される株式(上限420万株を引受価額の350.88円で買い付ける事が可能)
- 今回、1の安定操作で251万株買い付けたため、不足分の169万株は3.の第三者割当増資に申し込むことが想定される
- ただし、12/19現在株価が募集価格366円を上回って推移しているため、安定操作取引で買い付けた251万株の一部を市場で売却している可能性がある。例えば、50万株を市場売却した場合は、第三者割当増資株数が169万株→249万株に増加することになる
- 発行会社としては、増資金額が目減りすることは避けたいニーズがある。主幹事の立場からすると、安定操作で買い付けた株式は、市場に極力インパクトを与えないように市場売却するインセンティブがある
- 366円で買い付けた株をより高い価格(12/19現在は390円前後で推移している)で売却するため、経済的なメリットもある
他の地銀が追随する可能性
- 地銀の公募増資は久しぶりだ。トモニHDを皮切りに地銀による公募増資が増加する可能性がある点には留意が必要だ
- 前回地銀による公募ラッシュが起きたのは2017から2018年にかけてだ
- 17年1月:みちのく銀行、17年2月大垣共立、南都銀行、17年10月青森銀行、18年6月清水銀行、18年8月琉球銀行
- また、2013年から2014年にはドル建てCBが一部の地銀で流行した
- 投資銀行や証券会社の地銀担当の営業マンは、今回のトモニHDの公募増資を受けて焦るはずだ。なぜなら、上司から「お前は担当地銀のニーズを把握できているのか?公募増資や資本政策の議論をお客様としているのか?」と詰められるからだ
- 各担当者は、「御行でも公募増資できますよ!提案させてください!。トモニのケーススタディと御行へのインプリケーション・考察を持っていきます。御行の公募増資を想定した勉強会やりませんか?」と営業・接待攻勢を繰り広げるだろう
- 実際2013年はドルCBを、2017年は公募増資を提案ラッシュだったはずだ(地銀祭りと謳って全国行脚した担当者の話はよく聞く)
- 引受証券会社にとって悩ましいのは、これまでの地銀株はとにかく流動性が低く、成長ストーリーが描きにくく、投資家に不人気だったことだ。2017-18年にかけて実施された地銀の公募増資は株価が急落した印象しか残っていない
- 引き受けても都内の個人投資家には人気がないため、地銀の本拠地がある支店で頑張って売るなどの販売努力をして売り切った事例もあっただろう
- ただ、今年から来年にかけては日銀の金融政策変更・デフレからインフレへというテーマがあり、地銀にとってエクイティ・ストーリーを描きやすい。2017年に比べ格段に公募増資を実施しやすい環境といえる(実際株価も堅調で投資家の人気も高いセクターとなっている)
- 2017-18年の公募増資はマイナス金利・デフレ環境下(=地銀に逆風)で実施された
- 一方、PBR1倍割れでの増資をどう考えるか?という議論もある。当社のPBRはx0.3で地銀のなかでも低位に甘んじている。地銀の増資案件が増えることは、マクロ的には相場環境がよいと解釈でき、悪いことではないが、ミクロな視点では低PBRでの安易な増資に対する否定的な意見もでてくるだろう
- 今回のトモニHDの増資後の株価や市場の反応が2017年の地銀案件と一緒になるのか、異なるのか。要注目だ
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-PO, トモニ, 公募, 増資, 評価